沼地のある森を抜けて
たぶん、普通に食卓にあるものというか食卓の一品としてぬか漬けが登場してもっと平和でさらっと読み通せる話は他にあると思うんだけど、ふと読み返したくなるのはこの本。でも読み終わった後の重さがあったんだよな、とかで躊躇っていたのを今年は完全に忘れていたので、10年以上ぶりに再読した。やはり色々考えさせられて、重かった。でもまた読み返すと思う。
ぬか漬けは大好きなんだけど、たしかにくたくたに疲れ切っている日や、外食してきてしまった日に「ああっ、漬けてたの忘れてた!」「昨日の私はなぜ漬けたんだ」等々恨めしく思うことはあって、
ぬか床を搔き回すときだけ、女は本音の顔を見せていたのかも知れない。*1
という一文に、はっとしてしまった。
いま我が家の食卓を支えてくれているぬか床は無印良品 発酵ぬかどこ 1kg 82931617で始めた*2んだけれども、ひとり暮らしになって初めてのぬか床は、実家から分けてもらったものだった。しばらく手入れを怠ってしまったときがあってダメにしてしまったのだった。たぶんいまのは3代目くらい。
実家のぬか床は父の担当で、父が不在の日だけ母が混ぜている。いまのが何代目かはわからないのだけど、初代は祖母が世話していたものを分けてもらったものだったらしい。祖母もやはりそれよりも前の代から譲り受けたものだったのだろうか、何代続いていたのだろうか、と読みながらふと、思ってしまった。
煩わしいと思うことも、面倒だと思うこともあるけど、たぶん次の引越しのときは塩で蓋をして持っていくと思う。
そしてこの本も、また読み返すと思う。